スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

リンカーン感想(ネタバレ)

licoln

原題:Lincoln
製作年:2012年
製作国:アメリカ
上映時間:150分
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:トニー・クシュナー
原作:ドリス・カーンズ・グッドウィン
製作総指揮:ダニエル・ルピ 、ジェフ・スコール 、ジョナサン・キング
製作:スティーヴン・スピルバーグ 、キャスリーン・ケネディ
撮影:ヤヌス・カミンスキー
プロダクション・デザイン:リック・カーター
音楽:ジョン・ウィリアムズ
編集:マイケル・カーン
衣裳デザイン:ジョアンナ・ジョンストン
キャスト:ダニエル・デイ=ルイス、サリー・フィールド、デヴィッド・ストラザーン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ジェームズ・スペイダー、ハル・ホルブルック、トミー・リー・ジョーンズ

あらすじ
貧しい家に生まれ育ち、ほとんど学校にも通えない少年時代を送ったリンカーンだが、努力と独学で身を立て大統領の座にまでのぼりつめる。しかし権力の座に安住することなく奴隷解放運動を推し進めたリンカーンは、一方でその運動が引き起こた南北戦争で国が2つに割れるという未曾有の危機にも直面していく。(映画.comより)


68点

公開からかなり時間が経ってしまいましたが、「リンカーン」感想です。
名作級とは言えませんが、かなりいい作品でした。久しぶりに劇場で泣きました。

本作は、アメリカでもっとも愛されている大統領リンカーンを描いています。しかし、彼の人生、或いは政治家人生の全てを描いているわけではありません。本作が焦点をあてているのは、合衆国憲法の修正13条成立の時期のみです。映画的には超おいしいはずの「人民の、人民による、人民のための…」の演説シーン(ダニエル・デイ=ルイスのリンカーンが完璧なので、最高においしかったはずなんです!)がなかったり、南北戦争のいきさつや奴隷解放宣言なんかもばっさりカットされており、リンカーンが2期目の大統領選に当選したところから物語ははじまります。これはかなりいい選択だったと思います。修正13条成立にのみ焦点をあてることで、かなり濃いドラマに仕上がっていました。

また、全体として多くを語り過ぎない演出が多かったです。リンカーン自身が、たとえ話を駆使した長話をぶちあげるので(作中でもちょっと不興をかってましたよねw)、さらに撮り方まで説明的だとくどくなってしまいます。その意味で、この寡黙な演出はよかったです。ごてごて演出しないことで粋な味を出しているシーンもたくさんありました。
例えば、ゲティスバーグ演説の登場のさせ方は素晴らしかったです。ゲティスバーグ演説はリンカーンを語る上では欠かせない演説ですが、これをリンカーン本人にはやらせないのです。戦地に向かう北軍の黒人兵士とリンカーンの対話のシーンで、この黒人兵士に語らせるんですね。「人民の、人民による…」と言いながら戦地に赴く黒人兵士をリンカーンがみつめる演出が粋でした!
白眉は修正13条成立の瞬間です。ぎりぎりまで成立するのかハラハラさせておいて(可決するのはわかっているのにハラハラさせるあたりもうまいですよね)、決定的な瞬間は騒然とする議会から離れ、鐘の音が鳴り響き風が吹き込む中、窓辺に静かに佇むリンカーンのシーンに切り替わります。最高に粋な引きの演出でした。

そして、本作の最高に素晴らしいポイントは役者たちの演技です。
なんといっても、主演のダニエル・デイ=ルイス!!完璧にリンカーンでしたね!
リンカーン本人
こちらが本物のリンカーン

ダニエルリンカーン
こちらがダニエル・デイ=ルイス演じるリンカーン

まるで本物のリンカーンがそこにいるようでした。単純に姿が似ているのもさることながら、スクリーンからも伝わるほどのカリスマ性や、聡明にして茶目っ気たっぷりで、人懐っこく誰からも愛される人格者というリンカーンのイメージを見事に体現していました。
普段は物静かで、でも話し出すと巧みでおもしろい例え話を駆使して長々と楽しげに話すリンカーンが、珍しく声を荒げて奴隷制廃止の重要性を説くシーンは秀逸でしたね。このシーンが情熱と説得力をもって心に迫ってくるのは、ダニエル・デイ=ルイスの力によるところが大きいと思います。

脇を固める俳優陣も素晴らしかったですよ。私は、デヴィッド・ストラザーンとトミー・リー・ジョーンズが特によかったと思います。
デヴィット・ストラザーンは、国務長官ウィリアム・スワードを演じていたのですが、偉大な人物のデキる右腕感がよくでていました。修正案を通すためにあれこれと画策する姿は、リンカーンと彼の信念を心から信じていることが伝わってきてよかったです。
トミー・リー・ジョーンズは完璧にハマってましたね!奴隷解放急進派のタデウス・スティーブンスを演じています。頑固で、皮肉屋で、自分の主張を決して曲げない、劇薬みたいなこの男を演じることができるのはトミー・リー・ジョーンズだけだと思います。修正13条が可決され、大変な騒ぎになっている議会から、スティーブンスが修正13条の原本を借りて(「折るけどちゃんと返すから」というセリフも妙にかわいくてよかったです)、杖をついて一人静かによぼよぼと出ていくところは、うしろ姿で全てを物語っている素晴らしいシーンでした。


ストーリーもよかったですね。
リンカーンの信条がわざとらしくなく丁寧に描かれており、民主主義の価値を改めて考えさせられました。あの時代、アメリカでさえ自由と平等は自明のものではなかったのですね。「黒人や女性にも参政権を与えるのか?」という演説に議会にいる人々がざわめくシーンを見て、現代とは全く異なる価値観に驚かされました。それだけに、リンカーンの「はじまりは全て等しかった」というセリフが重みをもちます。
スティーブンスのエピソードは涙なしには観れませんでした。スティーブンスがなぜ奴隷解放に執着し、妥協できないのか、そして、なぜ妥協するに至ったのか、どれも理由は一つなのですが、それが明らかになるシーンを終盤に持ってくるあたり、にくいですよね。

ただ、ストーリーの運びはやや中途半端なところも多かったです。
特に、多くの人が突っ込みを入れたであろう、リンカーンと息子のロバートの対立がうやむやのままに終わってしまったのは、どうしてももやもやしてしまいますよね。また、ラストもなんとなくすっきりしませんでした。ストーリーの運びとは少し違う話なのですが、リンカーンがやはり手袋をつけずにウィリアムに返し、暗殺の劇場に向かう後ろ姿のシーンで終わった方が座りがよかったと思います。その後、暗殺のシーンも入れずに、リンカーンの遺体を家族達が囲み、リンカーンの演説を回想シーン的に入れて終わり、というのは蛇足に感じました。
もちろんリンカーン史にリンカーンの暗殺が欠かせないのはわかりますが、それなら暗殺シーンを入れた方がよかったのではないでしょうか。暗殺シーンを入れないというのは、いくらなんでも引きすぎです。その他の引きのシーンが引きの演出として成立しているのは、リンカーンの視点を入れているからです。ラストのリンカーン暗殺以降は誰の視点で描かれているのかよくわからず、少し散漫になってしまっていました。


ダニエル・デイ=ルイスのリンカーンぶりを見るだけでも価値のある作品です。
民主主義の理念や価値を考えるきっかけにもなると思います。ちょっと長い作品ですが、興味のある方はぜひ。おすすめですよ!




追記:Eveさんが運営していらっしゃるブログ「The Jones Gazette」のリンカーンカテゴリの記事が素晴らしかったので、紹介させていただきます。
「The Jones Gazette」ではトミー・リー・ジョーンズ氏の最新情報が紹介されています。Eveさんのトミー愛が炸裂する素敵なブログです。
その中のリンカーンカテゴリは21の記事からなっています。トミー関連記事はもちろんのこと、インタビュー動画やキャラクターとキャストの比較画像などの記事もあり、情報満載です。ぜひみなさんもご覧になってください。

「The Jones Gazette」のリンカーンカテゴリはこちらから
「The Jones Gazette」はこちらから

スポンサーサイト

L.A. ギャング ストーリー感想(ネタバレ)

L.A. ギャング ストーリー

原題:Gangster Squad
製作年:2013年
製作国:アメリカ
上映時間:113分
監督:ルーベン・フライシャー
製作:ダン・リン、ケビン・マコーミック、マイケル・タドロス
製作総指揮:ルーベン・フライシャー、ポール・リーバーマン、ブルース・バーマン
原作:ポール・リーバーマン
脚本:ウィル・ビール
撮影:ディオン・ビーブ
美術:メイハー・アーマッド
衣装:メアリー・ゾフレス
編集:アラン・ボームガーテン、ジェームズ・ハーバート
音楽:スティーブ・ジャブロンスキー
キャスト:ジョシュ・ブローリン、ライアン・ゴズリング、ショーン・ペン、ニック・ノルティ、エマ・ストーン、アンソニー・マッキー、ジョバンニ・リビシ、マイケル・ペーニャ、ロバート・パトリック、ミレイユ・イーノス、サリバン・ステイプルトン、ホルト・マッキャラニー

あらすじ
ドラッグや銃器取引、売春で得た金を使い、警察や政治家をも意のままに操る大物ギャングのミッキー・コーエンは、自らを「神」と豪語し、ロサンゼルスを支配する。しかし、そんなコーエンを打ち破るべく、6人の警察官が立ち上がる。警察当局は一切の責任を負わないという命がけの任務に就いた6人は、警察官という素性も名前も隠し、コーエン率いるギャング組織へ戦いを挑む。(映画.comより)


48点

ゴールデンウィーク最終日に鑑賞してきました。本当は「リンカーン」を観に行ったのですが、すでに満席となっていたため、急遽こちらを観ることにしました。

ギャング映画として観るとかなり物足りない作品ですが、連休の最終日に何も考えずに観る娯楽作品としてはよかったと思います。


まず、キャストが豪華でした。
ロサンゼルスを牛耳る大物ギャングにショーン・ペン、対する警察のギャング部隊にジョシュ・ブローリン、ライアン・ゴズリング、また、ギャングの情婦に「アメイジング・スパイダーマン」でグウェンを演じたエマ・ストーンなどなど、主要キャラは有名俳優で固められていました。ギャング部隊の頭脳担当キーラー巡査は最近見たなと思ったら、「テッド」の変態お父さんでした。真剣な顔をすると変態に見えてしまう罠。

1940年代後半という時代感がよく出ていて好感が持てました。
私はこの時代のアメリカがどういうものかは正確にはわかりませんが、衣装や美術から1949年が舞台だということが説得力をもって伝わりました。特に冒頭で娼館に誘拐されてしまう女の子のいかにも田舎出身風の野暮ったい服装や、グレイスのいかにもマフィアのボスの情婦風の(そして同時にスターを目指していたグレイスらしくもある)服装やメイクは、時代感があってよかったです。男どもが帽子をかぶっているのも気分ですよね。
キャストもその時代感にぴったりはまっていました。ジョシュ・ブローリンのはまりようは異常でしたね!顔立ちからして古いアメリカの男の雰囲気満点です。また、意外にライアン・ゴズリング、エマ・ストーンもはまっていましたよ。

ストーリーがテンポよく進むのもよかったです。
冒頭の衝撃的な虐殺シーンから、ラストのタイマン勝負までもたつくことなく物語が展開していきました。コミカルなシーンの配分も絶妙で、楽しく観ることができました。特に、ギャング部隊初めてのミッションがあっさり失敗して、おまけにあっさり警察に捕まるくだりなんかは愉快でしたよ。その後の脱出劇もおもしろかったです。


ただ、全体的に描写やキャラクターが薄かったです。
メインキャラクターであるジョンとミッキーに奥行きが全く感じられませんでした。この二人が一貫して善、一貫して悪なところがつまらなかったです。
細かな描写で「おっ」と思わせるところもあったにはあったのですが、そこから何か発展するわけでもなく、おしかった気がします。例えば、ラスト付近、ミッキーがギャング部隊に正面突破をかけられて逃げようとする場面で、身なりに異様に執着するところは、ミッキーの物事に対するこだわりの強さや意外に繊細なところがでていてよかったのですが、それが別のシーンとつながっているわけでもなく、ちょっとした小ネタ止まりになってしまっているのがおしかったです。ジョンにしても、仲間から「どっちが悪の組織かわかったものじゃない」と言われるシーンがせっかくあるのだから、もう少しその危うさにつっこんだ描写なり、苦悩する描写なりがあればもっとよかったのではないでしょうか。

ギャング部隊のチーム感がなかったのも残念でしたね。せっかく特訓シーンまで用意しているんだから、ケナード巡査の最期の伏線を張るだけじゃもったいないです!ギャング部隊が次第にチームとしてまとまっていく過程を描写する格好の場面なのに、あまりにももったいなさすぎるのではないでしょうか。ジョンの家の庭でみんなでごはんするシーンも、チームのメンバーでキャッキャしてるところが見たかったですね。こういうチームものは、チームのチーム感というか、仲のよさや絆が最大のキモになるわけで、その描写がおろそかになってしまうと盛り上がりもイマイチになってしまいます。もっとチームとして互いを信頼し合ったり、絆が深まったのがわかるようなシーンがほしかったですね。
最大のおしいキャラは、ラミレス巡査です。せっかく内通者っぽさをビンビン出して登場したのだから、もっと内通者なのか?とハラハラさせるか、ラミレスにしかできない派手な手柄をたてるかしてほしかったです。ラストのケナード巡査をサポートするシーンや、数年後にケナード巡査を想わせるような立派な警官になっているシーンはよかったんですけどね。


そして、最大のがっかりポイントはアクションです。何といってもラスト付近のホテルのロビーでの撃ちあい!

だっっっっさ!!!!

これはナシだと思います。1940年代感からは完全に外れるし、現代的なアクションのテイストを取り入れたにしては古臭いし。第一今時スローモーションとかどうなのよ…。
その他もこれは!と思えるようなアクションシーンはありませんでしたね。がっかりです。


その他の点は箇条書きで。
・パーカー市警本部長が一番のお気に入りキャラです。あの渋い風格に渋いお声で、熱い心を持った天の声的キャラクターなんておいしすぎますっ!
・相変わらずライアン・ゴズリング君素敵です。特に靴磨きの子が殺された後、ミッキーを殺そうとするシーンの表情が絶妙でした。
・ミッキーによる脳漿飛び散るハードなおしおきシーンの後に、生焼けハンバーグを持ってくるセンスは正直嫌いじゃない。冒頭のシーンといい、この監督は変態の匂いがしますね(もちろん褒め言葉ですよ)

いろいろ書きましたが、気楽に観れる娯楽作品としてはなかなか面白いのではないでしょうか。ジョシュ・ブローリンの渋さが最大限活用されていてうれしい作品ですよ。

塀の中のジュリアス・シーザー感想(ネタバレ)

塀の中のジュリアス・シーザー

原題:Cesare deve morire
製作年:2012年
製作国:イタリア
上映時間:76分
監督:パオロ・タビアーニ、ビットリオ・タビアーニ
製作:グラーツィア・ボルピ
製作総指揮:ドナテッラ・パレルモ
脚本:パオロ・タビアーニ、ビットリオ・タビアーニ、ファビオ・カバッリ
撮影:シモーネ・ザンパーニ
編集:ロベルト・ペルピニャーニ
音楽:ジュリアーノ・タビアーニ、カルメロ・トラビア
劇中戯曲:ウィリアム・シェイクスピア
キャスト
コジモ・レーガ、サルバトーレ・ストリアノ、ジョバンニ・アルクーリ、アントニオ・フラスカ、フアン・ダリオ・ボネッティビットリオ・パレッラ、ロザリオ・マイオラナ、ビンチェンゾ・ガッロ、フランチェスコ・デ・マージ、ジェンナーロ・ソリト、フランチェスコ・カルゾーネ、ファビオ・リッツート、マウリーリオ・ジャフレーダ、パスクアーレ・クラペッティ、ファビオ・カバッリ

あらすじ
ローマ郊外にあるレビッビア刑務所では、囚人たちによる演劇実習が定期的に行われており、ある年、シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」が演目に選ばれる。オーディションでブルータスやシーザー、キャシアスなどの役が次々と決まっていき、本番に向けて刑務所の至るところで稽古が行われる。すると囚人たちは次第に役と同化し、刑務所はローマ帝国の様相を呈していく。(映画.comより)


73点

短いながら、とてもおもしろく、これまでに観たことのないような作品でした。

話の筋は至ってシンプル。刑務所にいる囚人たちが、演劇実習で「ジュリアス・シーザー」を演じることになり、練習を重ねていくというものです。それ以上のことは起こりません。

しかし、その話の演出の仕方がとにかく普通じゃない!
まず、話の中心になっているのが、「ジュリアス・シーザー」のストーリーそのものなのです。囚人たちがいかに本番に向けて練習して演劇を完成させたかという点は、「ジュリアス・シーザー」のストーリーに添う形で描かれていますが、実は話の本質ではありません。
構成は、囚人たちが演じた「ジュリアス・シーザー」のラストシーンから、舞台が終わり、囚人たちが舞台から監房へと戻っていくシーンへと続きます。そこからモノクロになって6ヶ月前へと時間がさかのぼり、「ジュリアス・シーザー」のキャストを決めるオーディションのシーンになります。そして、キャストが決まり演劇の練習が始まるのですが、ここからが本作品の独特なところです。「ジュリアス・シーザー」のストーリーに沿って、刑務所の様々な場所で繰り広げられる練習風景を見せるのですが、つっかえたり演技指導が入るのは初めのうちだけ。練習が進むにつれて、そして囚人たちが役にのめりこむにつれて、演劇の練習をしているのか、ローマ帝国にいるのか、私たち観客にもわからなくなってくるのです。

この効果を作り出している原因の一つは、もちろんモノクロの画面です。画面をモノクロにすることによって、「今・ここに在る」という感じがやや希薄になりますよね。モノクロは「今ではない・ここではないどこか」という印象を与え、こうして私たちは現代の刑務所の中にもローマ帝国を見出すことができるのです。
そして、もう一つの原因は、刑務所という場所の特殊性です。舞台になっているレビッビア刑務所は、重罪犯たちが収容されている刑務所です。その重罪犯たちが、ローマ帝国の独裁者や裏切り者、あるいはアジテーターたちにぴたっと重なってくるんですね。これは、「ジュリアス・シーザー」の劇中でブルータスがシーザーを裏切ろうとして煩悶する場面に、ブルータスを演じるサルバトーレが自らを重ねて苦悩するシーンによく表れています。また、ディシアスとシーザーがやりとりをする場面の練習のさなかで、ディシアスを演じるフアンが台本にない台詞を言うシーンなんかはぞくぞくするほど、ローマ帝国という虚と刑務所という実が入り混じった名場面でした。

また、刑務所という場所の特殊性は、独裁と裏切りという「ジュリアス・シーザー」の世界観との親和性と同時に、自由というローマ帝国の価値観との齟齬もはらんでいます。刑務所という規律された空間の中で、(演劇の中の虚構とはいえ)権力を持った為政者が殺され、それに対して「自由だ!」と叫ぶ違和感。塀の中のローマの自由民たち。この倒錯性が一番よく表れているのが、ラストの囚人たちが監房に戻っていくシーンです。舞台の上での自由なローマ帝国とガチャンと厳重に閉じられた監房の鍵との対比が見事です。実は舞台の上の自由なローマ帝国ですらも規律の一部に組み込まれているというさらなる倒錯性まで表現されています。この、「ジュリアス・シーザー」の世界観と刑務所との親和性と倒錯性が本作品の一番の魅力だと言えるでしょう。


これまでにないような映画の体験をさせてくれる作品です。76分という短い上映時間も私としては好印象ですね。ぜひとも観てみてください。おすすめです。

テッド感想(ネタバレ)

テッド

原題:Ted
製作年:2012年
製作国:アメリカ
上映時間:106分
監督:セス・マクファーレン
製作:スコット・ステューバー、セス・マクファーレン、ジョン・ジェイコブス、ジェイソン・クラーク
製作総指揮:ジョナサン・モーン
原案:セス・マクファーレン
脚本:セス・マクファーレン、アレック・サルキン、ウェルスリー・ワイルド
撮影:マイケル・バレット
美術:スティーブン・ラインウィーバー
編集:ジェフ・フリーマン
衣装:デブラ・マクガイア
音楽:ウォルター・マーフィ
キャスト:マーク・ウォールバーグ、ミラ・クニス、セス・マクファーレン、ジョエル・マクヘイル、ジョバンニ・リビシ、パトリック・ウォーバートン、マット・ウォルシュ、ジェシカ・バース、パトリック・スチュアート、ノラ・ジョーンズ、サム・ジョーンズ、トム・スケリット

あらすじ
いじめられっ子の少年ジョンは、クリスマスプレゼントにもらったテディベアのテッドと本当の友だちになれるよう、神様に祈りをささげる。すると翌日テッドに魂が宿り、2人は親友になる。それから27年が過ぎ、ジョンとテッドはともに30代のおじさんになっていた。一時は「奇跡のテディベア」としてもてはやされたテッドも、幻惑キノコで逮捕されてからは堕落し、下品なジョークと女のことばかり考える日々。そんなある日、ジョンは4年間つきあっている恋人から、自分とテッドのどちらかが大事なのか選択を迫られ……。(映画.comより)


70点

笑って泣ける作品とはこのこと!!

かわいいテッドに完全に心を奪われてしまいました。ぬいぐるみが動くとこんなにかわいいか!という感じです。
特に、雷が鳴ってジョンが怖がっているところに、これまた雷を怖がっているテッドが走ってやってきて布団にもぐりこみ、2人で「雷兄弟の歌」を歌っているシーンが私のお気に入りです。(次点は、「俺のふわふわの指にも指輪をはめろよぉ」ですw)
テッド11
見よ、このかわいらしさ!!

また、かわいい見かけに反して酒は飲む、ヤクはキメる、下品な事を言いまくるとやりたい放題なところもよかったですね。かわいい外見のキャラが実はダーティというのは、お約束ですがおもしろいですよね。
サウス・パークのタオリーや
タオリー
こいつもヤクをキメてましたねw

まりあ†ほりっくの寮長先生など
寮長先生
寮長先生まじゴッド

かわいいのに実はダーティというキャラには枚挙にいとまがありません。マスコットキャラだとダーティでも、かわいいから許せちゃうんですよねw
また、テッドの場合、ダーティさがリアリティの演出としても機能していました。魂が宿ったばかりの頃は、声もかわいくて下品なセリフも言わなかったのですが、ジョンと長い年月過ごし、ジョンと共に成長した結果として、中年おっさんみたいな声になって下品なことを言ったり、酒を飲むようになったりしたわけですね。オープニングのジョンとテッドの成長を追った映像と合わせて、テッドの実在感やジョンと一緒に過ごした時間の長さをリアルに表現できていました。

テッドがかわいいだけではありませんよ。ストーリーもとてもよかったです。単なる動くぬいぐるみの話になっていなかったのは好感が持てます。
本作のストーリーは、ジョンの側から見るか、ジョンの恋人ロリーの側から見るかで、大きく変わります。ジョンの側から見れば、恋人も大事だけど友達とガキみたいなバカやってるのも楽しくて、バカやってたら恋人に捨てられそうになってさあ大変という話だし、ロリーの側から見ると、恋人の友達は尊重したいけど、その友達のせいで恋人は自分との将来を考えてくれそうもなくてどうしたらいいのという話です。どちらも現実によくある話ですよね。そんな「よくある話」に、動くぬいぐるみという要素を入れると、深刻さが増すところに本作のおもしろさがあります。ジョンの親友がぬいぐるみであるために、ジョンの子どもっぽさが際立ち、ロリーのいらだちも募るわけですね。動くぬいぐるみというファンタジー要素を、上手にリアルな話の中に織り込んだなぁと思います。

テッドとジョンの男同士の友情の描き方も好きです。
男子の友情の間には、なかなか女子は入っていけませんよね。「ビア~スキー」という名前っぽいのをテッドとジョンが挙げていき、最後にロリーが「マルチナ・ナブラチアビスキー?」と言うと、テッドとジョンが同時に「それはダメ」とダメ出しするシーンはよかったです。テッドとジョンにしかわからないルールがあるところや、ロリーがそこに入れなくてややキレ気味になるところに男子の友情感が感じられます。
テッド3
彼氏と彼氏の友達がここまで仲いいのは、ちょっと妬いちゃうよねw

一番好きなテッド&ジョンの友情シーンは、やっぱり本気の殴り合いからの仲直りシーンです!
テッドはぬいぐるみとは思えないほどの打撃音を出しながらジョンをぼっこぼこにし、ジョンもぬいぐるみ相手に本気で殴りかかります。シチュエーションだけでもかなり笑えますし、喧嘩の大惨事具合もなかなか愉快でした。その後の仲直りは感動的でしたね。30年以上も親友をやってきた2人の強い絆と友情を感じます。BB弾で撃ったリスの話の見事なオチも秀逸だと思いますw
そして、テッドが誘拐されて、逃げる途中にバラバラになってしまってからの展開は、涙なしには観れません。ジョンと一緒になって「テッド助かって!」と必死になってしまいました。テッドが死んで、ジョンがテッドの言った通り雷を怖がらなくなった描写がさりげなく入っているのもよかったですね。翌朝テッドが生き返っているのを見て、お約束で見え見えの展開ではありましたが、感動してちょっと泣いてしまいました。


テッドのかわいさだけでも十分映画館に観に行く価値があります。おすすめですよ。

ダイ・ハード ラスト・デイ感想(ネタバレ)

ダイ・ハード/ラスト・デイ

原題:A Good Day to Die Hard
製作年:2013年
製作国:アメリカ
上映時間:98分
監督:ジョン・ムーア
製作:アレックス・ヤング、ウィク・ゴッドフリー
製作総指揮:トム・カーノウスキー、ジェイソン・ケラー、スキップ・ウッズ
脚本:スキップ・ウッズ、ジェイソン・ケラー
撮影:ジョナサン・セラ
美術:ダニエル・T・ドランス
衣装:ボヤナ・ニキトビッチ
編集:ダン・ジマーマン
音楽:マルコ・ベルトラミ
キャスト:ブルース・ウィリス、ジェイ・コートニー、セバスチャン・コッホ、ラシャ・ブコビッチ、コール・ハウザー、ユーリャ・スニギル、メアリー・エリザベス・ウィンステッド

あらすじ
ニューヨーク市警の刑事ジョン・マクレーンは、遠くロシアの地で警察沙汰のトラブルを起こした息子ジャックの身柄を引き取りにモスクワへ降り立つ。しかし、到着早々にテロ事件に巻き込まれたことをきっかけに、大物政治家や大富豪、軍人らが暗躍する巨大な陰謀を壊滅させるためジャックとともに奮闘するはめになる。(映画.comより)


35点

ダイ・ハードシリーズ最新作ということで、期待と不安で一杯になりつつ観に行きました。感想を一言で言うと、もうがっかりだよ!!!といったところですね。

まず、脚本ががっかりでした。こんなのダイ・ハードじゃない!
主人公のジョン・マクレーンからして、こんなのジョン・マクレーンじゃない!という感じでした。彼は、特別強いわけではないただの刑事で、色々な事件にただ単に運が悪くて巻き込まれちゃうというキャラだったはずです。それが本作では、敵を殺すために自ら出向いてドンパチやらかす始末。ブルース・ウィリスの「最強のアクション俳優」というパブリックイメージが先に立ちすぎていて、ダイ・ハードのジョン・マクレーンではなくなってしまっていました。ラスト付近のジャックがジョンに向かって、「あんたは運が悪いのか自分から事件に首を突っ込んでいるのか時々わからなくなる」というシーンには絶句してしまいました。この脚本家は根本的にマクレーンのキャラを勘違いしています。マクレーンは自分から事件に首を突っ込むタイプではないんです!!
悪役との知恵比べがなかったのもダイ・ハード感がなくてがっかりでした。ジョン・マクレーンのキャラの描き方とも関係してくるのですが、ダイ・ハードは決して身体能力が高いわけではないマクレーンが身体を張って、さらに知恵を使って敵に勝つというところがキモだったはずです。しかし、本作では知恵を絞って困難を乗り越えるような展開がなく、ただただ敵を殺していくだけでした。これだったらダイ・ハードである必要がありません。

また、ダイ・ハードじゃなかったとしてもいまいちな箇所も多かったです。
とにかく「やっとる場合か!」とか「わざとらしいよ!」とツッコミたくなるシーンが多かったです。マクレーンがコモロフに「俺はダメな父親だった」と話すのを、トラックの影からジャック聞いているシーンが典型ですね。そもそもわざとらしいし唐突だし、すごく急いでいるはずなのに、今それやらなきゃダメ?という感じでした。
マクレーンの執拗な父親アピールもうっとうしかったです。なにかにつけて「俺は父親だぞ」とくるのが、イライラする上にわざとらしく感じました。特にジャックのお腹に刺さったものを抜くシーンは、非常にいらついてしまいました。過剰な父親アピール、いらない思い出話、無駄なセンチメンタリズムととにかく無粋な要素が多すぎます。マクレーンと息子が和解する過程を見せたいのはわかりますが、演出過剰にも程があります。初めにマクレーンとジャックが決定的に仲たがいしているところを見せておいて、親子共闘からお互いを信頼している描写にそのままつなげてもよかったのではないでしょうか。

いろいろ文句は言いましたが、実際脚本についてはそんなに期待していなかったのでいいのです(予想よりずっと出来が悪くてがっかりではありましたが)。問題はアクションもがっかりだったことです。せっかくIMAXで観たのに、全く楽しめませんでした。
アクションがびっくりするほど見づらいです。カメラを揺らしすぎだし、カットの割り過ぎで何が起こっているのかさっぱりわかりませんでした。アクションで何が起こっているのか分からないのは最悪です。
序盤のカーアクションシーンは本当に最悪でした。見にくい上に、ストーリーは進行しないし、無駄に長いしで、ブレブレの映像を延々と見せられるちょっとした苦行シーンになっていました。そもそもアクションのためのアクションになっていてストーリーが進行しないのはどうかと思うのですが、ストーリーが進行しないなら短く済ませるべきだし、アクションメインのシーンなのに肝心のアクションが全く見えないのは苦痛です。


不満な点はたくさんあるのですが、最後のヘリの爆発シーンは派手で唯一よかったシーンだと思います。なので、爆発ポイント15点、ブルース・ウィリスポイント20点で35点というところですね。

07 | 2017/08 | 09
Su Mo Tu We Th Fr Sa
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール

ぞるたん

Author:ぞるたん
映画が好きです。
映画歴は短いので、旧作の知識はあまりありません。おすすめ映画ありましたら、ぜひ教えてください!

映画もブログも超初心者ですが、どうぞよろしくお願いします。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。